竹富島(沖縄)にはこんな伝説がある

竹富島に星の形の砂があるのは、昔、にぬふぁぶし(北極星)と、んまぬふぁぶし(南斗六星)が産んだ子どもたちが、海の神様の怒りに触れて殺されて、 その骨が浜辺に打ち上げられたからだよ。可哀(★かわい)そうに思った御嶽のツカサは、星の子を香炉に入れて炊き上げて、お母さん星の近くに上げてあげたんだよ

この伝説を題材にした、ことばと絵のワークショップ「夏のてーどぅんむに(竹富方言)教室」が、竹富小中学校PTA文化部の主催で開かれた。

ワークショップは、伝説を元に制作されている絵本『ふしぬ いんのぬ はなし(星砂の話)』の読み聞かせから幕を開けた。 母親がツカサ(御嶽(★うたき)を管理し、神事を司る)で、星砂の話の伝承者だった内盛スミさん(故人)の朗読音声が流れ、 続いてスミさんの息子の内盛正盛公民館長と、親族の内盛ゆきさんが、てーどぅんむにと日本語の2言語で絵本を読み聞かせた。

次に、4・5㍍×1・7㍍の大きな画面に、子どもたちが『星砂の話』を聞いて思い浮かべた風景を描いた。 両手、両足に絵の具をつけて、空には星、海には色とりどりの生き物たちが描かれた。 そして大人たちに「いじゅ(魚)」「ふし(星)」などのてーどぅんむにを聞き、絵の横に書き入れていった。

hoshisuna 「星砂の話」を元に絵を描く子どもたち(撮影・水野暁子)

その傍らでは、絵本制作のワークショップが開かれ、参加者が絵本のページ1枚1枚を切り貼り、製本。 全員が、自分だけの『星砂の話』を制作した。最後には、中学生8人が担当のページを決め、絵本1ページずつのリレー朗読をした。

講師を務めた国立国語研究所の山田真寛准教授、中川奈津子特任助教、イラストレーター/デザイナーの山本史さんからは、 言葉の継承には「3世代で取り組むことが鍵」という話がされた。その言葉の通り、『星砂の話』を語った内盛スミさんは亡くなってしまったが、 絵本のために伝説の再話、文法の調査に協力してくださった思いが、子や孫の世代に繋がったイベントとなった。

参加者のひとりは「子どもたちは大きな絵を描くことをとても楽しんでいた。大人たちも、内盛さんの音源を聞けたことがとても貴重な経験になったのではないか」と話した。 竹富島では毎年、方言大会が行われるなど、子どもたちが方言の学習をしたり、方言に親しむ機会はあるという。 ただ、今回はことばと絵が組み合わさることで、頭だけでなく全身、知性だけでなく感性も使ってことばに触れる新鮮な機会となった。

『星砂の話』は「言語復興の港」(絵本等のコンテンツ制作を通じて地域言語の継承・復興を目指すプロジェクト。代表・山田真寛准教授)より制作中。 『星砂の話』を含む、奄美・沖縄4島の絵本について、今秋にクラウドファンディングによって出版資金を募り、来夏までに出版予定である。 (日本学術振興会特別研究員/国立国語研究所)

えらぶむに ©2022. Photo: ARISA KASAI